
子育て山あり谷ありPARTⅡ
講演会「思春期の問題にどうかかわるの?
いじめ、不登校、発達障害・・・」
加藤 弘通さん(北海道大学大学院教育学研究院准教授)
2013年12月15日(日)に、札幌市男女共同参画センター大研修室(札幌エルプラザ内)で、「子育て山あり谷ありPARTⅡ」の講演会&交流会を開催しました。発達障害の小さなお子さんのいる若いお母さんや思春期のお孫さんのことが心配で参加されたお祖父様、子ども・子育ての現場で頑張っている方々など24名の方が、悪天候にもかかわらず参加してくださいました。
講演では、発達心理学の研究者として、臨床心理士としての現場での経験を踏まえ、実践事例を紹介しながら「発達」についての見方・考え方を説明して下さいました。お話の中で、特に印象に残った部分をご紹介したいと思います。
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★支援の方法~「できる、できない」ではなく「どうありたいか、どうしたいか」
思春期の難しさは、「できる、できない」だけで物事を見はからうのではなく、「どうありたいか、どうしたいか」に焦点を当てないといけない。「支援の中身よりも、支援をどう手渡すか」が大切であり、たとえ良い支援があったとしても、差し伸べた手を握り返してくれなければ、何にもならない。
★発達という見方~見方を変えると同じ事が違って見える
「見方を変えることで、違ったものが良く見えてくる」相手のどこを見るかによって印象が変わる。問題を抱えている子の保護者は、自信を無くしていることが多いが、実際はうまくいっていることの方が多い。24時間問題を起こしている子どもはいない。問題が起きているのは一時で、問題が起きていない時間の方が多いのだから、問題の起きていない時、うまくいっている時の関わりに焦点をあて、それを繰り返していくことが大切である。
★発達は良い事ばかりではない、問題は悪い事ばかりではない
きちんと発達していれば、親に言いたくないことができ、秘密を持ち、反抗的になることもある。反抗できるだけの力を蓄えてきているということ。思春期は不安定というが、親の言うことを聞いていた子が反抗的になることで、不安定になっているように見えてしまっているだけ。むしろ思春期は論理的・合理的に考えられるようになる時期で、理屈で物事を考えられるようになる。
★いじめる力が付いたとき、教育は何を提供できるのか
9~10才頃から、相手の気持ちが分かるようになり、「私があなたをどう思っていると、あなたがどう思っているか」が理解できるようになる。恋愛と同じで駆け引きができるようになる。相手の気持ちが分かるということは、良い方向に使えば相手に対して優しくなれ、相手のことを考えることができるようになるが、悪い方向に使うと、どうすれば相手にダメージを与えることができるかが考えられるようになる。教育現場では、いじめる力が付いた時に、その力をどう利用し学びを提供できるかが課題では…。
★本当に困った時に頼れる存在
年長さんで、キレて困る子がいる。白目をむいて椅子を振り上げる。担任が体を入れて「危ない!」といった。ベテランの保育士が椅子を握って「よく我慢したね」「椅子を振り上げたくなるくらい嫌なことがあったの?」と聞いたら泣き出して「あった」と答えた。大人がどんな言葉をかけるかによって、「我慢できない悪い子」が「我慢できる子」になる。「嫌な気持ちを先生に話してみないか」と問いかけ、徐々に担任に嫌なことがあると気持ちを伝えるようになり改善されていった。本当に困った時に頼れる関係をつくることが大切。
★最後に
①問題にどういう要求が表れているのか、どうしてそういう問題を この子が起こすことができるのかを考えて欲しい。発達している から問題は起きる。
②子育てしていれば、困ったことが起きるのは当たり前。困った時 にしっかり頼れる関係ができているかは日常の関わりが大切。 個々にはいろいろな人がいるけれど、人は信用にたる存在である ことを知っておいてもらうことが必要。
③発達はスピードではなく順序である。経験を積むことの必要性。
一つ一つのステップを踏んでゆかないと問題を乗り越えていかれ ない。
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講演後の交流会では、先生が語られた実践例についての理解を深める話し合いができたと思います。参加者の皆さんにとっても実りある一時となったことでしょう。先生は講演中、参加者が眠くならないようにと気を配ってくださいましたが、少し早口のテンポの良い話し方は、眠くなるどころか引き込まれていったという感じでした。